ウクライナ、30日間の戒厳令へ 国連安保理、露の提案を否決 艦船拿捕問題

 【モスクワ=小野田雄一、ニューヨーク=上塚真由、ベルリン=宮下日出男】ウクライナ南部クリミア半島とロシア領を隔てるケルチ海峡で、ロシアがウクライナ艦艇に発砲、拿捕(だほ)した問題で、ウクライナのポロシェンコ大統領は26日、同国の一部地域を対象に30日間の戒厳令を敷く大統領令に署名し、同国議会が承認した。

 イタル・タス通信によると、同氏は「戒厳令は28日に実施する」と説明。ロシアから地上攻撃があった場合のみ適用するという。

 戒厳令の対象地域は、ロシアに近い東部のドネツクやルガンスク、南部のオデッサなど計10州やケルチ海峡内側のアゾフ海。同氏は当初、戒厳令の期間を60日間とする方針を示していたが、30日間に短縮した。

 一方、国連安全保障理事会は26日、拿捕問題をうけ緊急会合を開催。米国のヘイリー国連大使は「ウクライナ領に対する言語道断の主権侵害」とロシアを非難した。

 ロシアのポリャンスキー国連次席大使は、ウクライナ艦艇が、ロシア当局の通告を無視して違法にロシアの領海に侵入したと主張し、ウクライナ側の「挑発行為」と訴えた。

 これに対し、ウクライナのイェルチェンコ国連大使はウクライナ艦艇はロシアとの合意に従い、事前通告をした上で通行しようとしたとし、露側の主張を「完全な嘘」と批判した。

 露側は国連安保理の緊急会合で、同問題について「ロシア領海への侵入」を議題に協議を行うことを提案。中国などが賛成したが、米国や英国、フランスなどの反対多数で否決された。ロシアによる2014年のクリミア併合が、国際社会に受け入れられていない現状が改めて示された形だ。

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