イネの初冬直播き栽培実験がスタート

岩手大学農学部の付属農場でスタートした国内で例のないイネの初冬直播き栽培実験=20日、岩手県滝沢市
岩手大学農学部の付属農場でスタートした国内で例のないイネの初冬直播き栽培実験=20日、岩手県滝沢市

 降雪前に直播きした籾を越冬させてコメを栽培する国内では例がない「イネの初冬直播き栽培」の本格的な実験が20日、岩手県滝沢市にある岩手大学農学部の付属農場で始まった。稲作で最も労力が集中する春の育苗から田植えが省ける画期的な栽培法で、成果が注目されている。

 実験に取り組むのは同大農学部作物学研究室の下野裕之准教授(45)を中心にしたグループ。農研機構(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構)から3カ年で1億5千万円の補助金を受けることで実現した。北海道から福岡県までの11の研究機関と3つの生産者が参加している。

 下野准教授が「イネの初冬直播き栽培」の研究を始めたのは平成20年から。北海道で春まき小麦の種を初冬にまく栽培法がヒントだった。「春は農作業が集中する。これが実現すれば、育苗も田植えも、春の直播き作業も不要になる。高齢化が進む農家の負担軽減につながる」(下野准教授)の思いからだった。

 しかし、稲は亜熱帯原産の作物。雪を断熱材にして地表面付近が零度前後になる環境下で、籾を休眠状態に保って春の出芽率(土から芽を出す割合)をいかに高めるかが大きな課題だった。籾を直播きするだけだった当初の出芽率は5%に過ぎなかった。

 試行錯誤の末、籾に鉄粉などをコーティングしたところ出芽率は25%まで向上した。青森県弘前市で「まっしぐら」を使った試験栽培では10アール当たり600キロを2年連続で収穫した。ただ、春の乾田直播き栽培の出芽率60~70%には遠く及ばず、実験は3年間で出芽率を50%まで高め、安定した栽培技術を構築するのが目標。

 下野准教授は「これが確立すれば、春のコメの農作業がほとんどなくなる。農家の選択肢も増える」としており、日本農業の課題となっている稲作の一層の規模拡大、野菜、花き、果樹が主な農家の選択肢の拡大に期待が集まっている。