認知症の高齢者が行方不明になるケースが全国的に相次ぐなか、徘徊する認知症高齢者に声をかける模擬訓練が奈良市で初めて実施された。地域を挙げて見守り、安全を確保するのが狙い。訓練はJR奈良駅から近鉄新大宮駅にかけての路上で行われ、地域住民ら約40人が参加した。
「こんにちは。どこに行くん?」
奈良市大宮町の路上で、認知症高齢者にふんした女性に参加者の1人が声をかけた。「ここどこ? 疲れて足が痛い。大阪に帰りたいねん」と女性が言うと、参加者は「住所とか覚えていますか。少しあちらで休みましょう」と笑顔で話しかけ、近くの地域包括支援センターに誘導した。
参加した大宮地区の民生委員、艸香(くさか)和子さん(65)は「認知症の方も増えているので、声かけの仕方はとても参考になった」と話した。
県警人身安全対策課によると、昨年1年間に県内で確認された行方不明者は1109人に上り、うち302人が認知症患者だった。
市は身元確認のための識別番号を表示するQRコードシールを無料配布しているほか、位置情報をリアルタイムで確認できるGPS(衛星利用測位システム)端末を希望者に月額500円で貸し出している。市福祉政策課の担当者は「地域社会の結びつきが希薄になっている今だからこそ、認知症患者を見守る気持ちを持ってほしい」と呼びかけている。