--2016年リオデジャネイロ五輪後に1年余り休養し、天理大大学院で柔道を研究していました。振り返ってみてどうでしたか
大野 視野が広がりました。修士論文を書いたこともそうですし、柔道教室で子供たちに教えたり、テレビやイベントに出たりして、有意義な時間を過ごせました。今までは柔道での学びをインプットするだけで、整理する時間もなかった。これからは、この経験をいかに柔道に落とし込めるかが大事だと思います。結果を出さないと、「あのとき休まずに柔道をやっておけば勝てた」なんて言われかねない。どう生かすかは自分次第です。
--修士論文のテーマは大外刈り。得意技を研究し新たな発見はありましたか
大野 今まで感覚的にやっていた技を理論的に説明できるようになったことです。自分の柔道は正しくつかんで正しく投げる「オールドスタイル」といわれます。さまざまな文献をあさったり、技術本を読んだりして一番感じたのは、自分の大外刈りは時代に逆行しているというか、日本に古くからある形の技だということ。やってきた柔道を誇りに思いました。
--柔道のスタイルが日本古来のものと一緒だったのですか
大野 まったく一緒ではないですが、現代のルールに対応しつつ、古き良き日本柔道の軸をちゃんと守って柔道がやれていると。中高6年間の(柔道私塾の)講道学舎と天理大という日本の伝統的な柔道を重んじる環境で育った自分が、そういう柔道をしている意味は大きいと思います。日本のトップにいながら、それを試合で表現する意味も大きいと自覚しています。信じてきた道は間違いじゃなかったと、再確認の時間になりました。