サンゴ礁を救おう、静岡大の挑戦(下)本格化する再生プロジェクト

 サンゴの白化現象のメカニズムをほぼ特定したことで、鈴木教授らの次なるテーマは、何か。

 「次の3年間のテーマは、サンゴの白化をどう軽減するのか。白化をなくすことは難しい。われわれは水温を下げることができないから、高い水温でも耐えることができるように、活性酸素を減少させるとか、サンゴの免疫力を高めたい。例えば、ナノカプセルを使って、サンゴにエサやビタミンを補給できれば、あるいはウイルスファージの利用とか…」(鈴木教授)

 また、次の5カ年計画として、研究チームはさらに保全のための政策目標を2つ設定している。サンゴの健康状態を診断する判定基準を作成することとサンゴが育ちやすい環境を特定し、それをもとに保全・改善していくことだ。

 「判断基準の作成は、環境省から要望されていることで、これまではダイバーの見た目だけの判断で判定してきたサンゴの白化や死亡をできるだけ数値に基づいて判断したい、と。サンゴ礁保全も見た目やイメージから科学的なデータに基づくサンゴ礁保全の時代になっていかなければなりません。われわれの研究が、少しずつ政策策に反映されてきたのです。これは三菱商事と10年以上続けてきたプロジェクトの成果の1つです」(鈴木教授)

 サンゴ礁は、海の熱帯林ともいわれる。全海洋生物約50万種のうち、実に4分の1が生息するとされる。地球の生態系を守るためにも、サンゴ礁の保全が必要なのだ。鈴木教授らのプロジェクトは、国連が提唱している2030年に向けてのSDGs(Sustainable Development Goals(接続可能な開発目標) の「世界を変えるための17の目標」に大きな貢献をすることになる。

 カサレト教授は、「われわれはサンゴを守らないといけない。サンゴ礁には多くの魚が住んでいる。魚はサンゴに隠れて、卵も産あむ。格好の住み家なのです。サンゴがなくなることは、魚にも海の生態系にとっても大きな危機なのです」と警鐘を鳴らす。一方で、「これまでの国際サンゴ礁年のメッセージは、白化でサンゴは、みんな死ぬ、そんなネガティブなものが多かった。今年は、ポジテイブなイメージを出したかった。白化=死ではなく、サンゴの生命維持のシステムを理解し、免疫力が高まり、環境が整えば、サンゴは回復できる、そのためにできることをやりましょう。今後も三菱商事やNGOとともに、わたしたちは世界に先駆けた新たな研究にチャレンジすると同時に、科学的成果を共有し、行動の指針となるように『市民科学(Citizen Science)』を推進していきます」と話している。

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 鈴木教授らの主要な成果は、国際雑誌(Journal of Phycology, 51 (1) 37-45 DOI: 10.1111/jpy.12253、2015)に掲載された。

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