主張

第一次大戦100年 協調だけで平和は保てぬ

 第一次世界大戦の終結100年にあたる11日、パリの凱旋(がいせん)門で式典が行われ、トランプ米大統領やプーチン露大統領ら約70カ国の首脳らが参加した。日本からは麻生太郎副総理が出席した。

 式典は、犠牲者を追悼する表向きの表情とは裏腹に、各国の思惑がぶつかり合うシーンが目についた。厳かな式典の陰で、米仏首脳がさや当てを演じたのだ。

 マクロン仏大統領は演説で「愛国主義はナショナリズムと正反対のものだ。利益が第一で、他はどうでもいいという考えは精神的価値を失う」と述べた。ポピュリズム(大衆迎合政治)に端を発する自国優先的な考え方を批判し、国際協調の必要性を訴えた。

 マクロン氏は、米国の中距離核戦力(INF)全廃条約からの脱退表明など、折に触れてトランプ政権を批判してきた。トランプ氏から、式典を政治利用したと受け取られても仕方あるまい。

 トランプ氏は式典前、ツイッターで、マクロン氏がぶち上げた欧州軍構想について「非常に侮辱的だ」と批判した。北大西洋条約機構(NATO)を骨抜きにするものと受け止められたからだ。

 ひるがえって100年前、ウィルソン米大統領の提唱で創設された国際連盟は、当の米国が参加せず、国際協調による秩序維持は見果てぬ夢だった。

 ドイツと戦ったフランスは、支払い能力を超える巨額の賠償金を突き付けた。自国優先主義で戦後処理を誤ったのは、当のフランスだったことを忘れてはなるまい。過度の融和政策でドイツの暴走を招いたのは英仏両国だった。

 欧州は今、英国が欧州連合(EU)離脱を決め、メルケル独首相が2021年秋までの政界引退を表明した。ロシアはプーチン氏が独裁を強めている。欧州以外でも米国は、中国と新冷戦といわれる緊張状態に突入した。

 世界で地殻変動が起きている現在、欧州の平和と安定はわが国の安全保障に直結する。自国の国益に留意しながら、国際秩序の維持と安定に貢献するのは当然だ。

 国民を総動員し、国力の全てを結集してぶつかり合った参戦国は戦後、不戦の誓いを立てた。

 にもかかわらず、次の大戦を防げなかった。国際協調を唱えていれば平和は訪れるのか。当時世界で何が起きたのかを振り返り、現代に生かす機会としたい。