【ベルリン=宮下日出男】欧州連合(EU)のユンケル欧州委員長(64)の来年秋の退任に伴う後任選びが本格化した。人選に影響を与える欧州議会の左右2大会派が8日までにそれぞれ候補を固めた。EUの行政執行を担う欧州委員会を率いる欧州委員長はEU機関の最重要ポストとされ、EUの行方にも大きな影響を与える。
欧州委員長は3万人超の職員を抱え、EU機関で唯一の法案提出権を持つ欧州委のトップとして強力な権限を持つ。国際会議にもEU大統領と参加するEUの「顔」。欧州政治の重鎮であるユンケル氏は7月、貿易摩擦をめぐるトランプ米大統領との直談判で譲歩も引き出し、存在感を示した。
欧州議会最大会派の中道右派、欧州人民党は8日、来年5月の欧州議会選挙で立てる委員長候補にドイツ出身のマンフレート・ウェーバー議員(46)を選出。第2会派の中道左派、社会民主進歩同盟も5日、候補をフランス・ティメルマンス欧州委第1副委員長(57)に絞り込んだ。
委員長選びでは2014年の前回欧州議会選でEU首脳会議が選挙結果を「考慮」して提案する制度を導入。人民党候補のユンケル氏が委員長に就いた。次回選でも同党が最大勢力を維持すると見込まれ、ウェーバー氏には有利とされる。
だが、来年はEU懐疑派などの躍進で2大会派が後退し、欧州議会内の調整が難航する可能性がある。フランスは首脳会議の権限を重視し、前回の制度を踏襲することに反対。ウェーバー氏は閣僚経験もなく力量が不安視もされ、後継選びはなお不透明だ。
次期欧州委員長をめぐっては、EUに懐疑的な右派ポピュリズム(大衆迎合主義)勢力の結集を目指すイタリアのサルビーニ内相が「さまざまな加盟国の友人に頼まれている」と伊メディアに述べ、自身が名乗りを上げる可能性もちらつかせている。