来年の世界選手権(東京)代表第1次選考会となる柔道の講道館杯全日本体重別選手権最終日は4日、千葉ポートアリーナで男女計7階級が行われ、男子90キロ級で2016年リオデジャネイロ五輪覇者のベイカー茉秋(ましゆう)(日本中央競馬会)が初優勝を果たした。
ベイカー茉秋は田嶋剛希(筑波大)に先に技ありを奪われる苦しい展開になったが、残り33秒の大内刈りで同点に。延長49秒、相手の技をこらえ、小外掛けで畳に沈めた。「最後は執念。リオ五輪の金メダル以上にうれしい」。けがに苦しんだ分、笑顔が弾けた。
昨年4月に脱臼した右肩を手術し、「どん底を見た」という。体重や筋力は落ち、右肩をかばって左肩を痛める負の連鎖に陥った。今夏のアジア大会は3位。昨年と今年の世界選手権をテレビ観戦した自分が情けなく、「柔道を辞めようと思った」と打ち明ける。
だが、逃げなかった。2016年リオデジャネイロ五輪王者のプライドを「一度捨てて挑戦者になる」と決めた。柔道の原点に帰ろうと、今大会前は母校の東海大浦安高(千葉)に出向いて基礎から磨き直し、技の切れを取り戻した。優勝はリオ五輪以来だ。
2020年東京五輪出場へ望みをつなぎ、「やっとスタートラインに立てた。死ぬ気で2連覇したい」とベイカー。自信を取り戻した24歳が、決意を新たにした。(岡野祐己)