トルコ当局「残虐な犯行」説薄める 事態収拾へのシグナルか

 【カイロ=佐藤貴生】サウジアラビア人記者、ジャマル・カショギ氏殺害事件は、2日で発生から1カ月になる。サウジ側は「計画殺人」とは認めたものの遺体さえ見つかっておらず、全容解明とはほど遠い状態だ。10月末にはトルコ検察が捜査経過を初めて発表する一方、サウジでもサルマン国王の弟の帰国が報じられるなど、両国の動きが活発化している。

 トルコ検察当局は、カショギ氏はサウジ総領事館に入ってすぐに窒息死させられ、遺体は切断され遺棄されたとの捜査経過を発表。サウジの主任検事に「計画的殺人」と断定した根拠や遺体の行方を示すよう求めたという。

 事件の首謀者を明かすよう求めるトルコ側の姿勢は変わっていない。ただ、カショギ氏を入館直後に死亡させたという発表は、トルコや米のメディアが捜査当局者のリークを基に報じてきた内容とは異なる。

 カショギ氏は拷問されたり、生きたまま体を切断されたりした-などと報道されたが、トルコ検察が描く構図では「残虐な犯行」という色合いは薄まった。

 また、発表はサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子(33)の側近が犯行時、外部からインターネット電話で殺害を指示した-といった報道を否定した形で、サウジ側が「政府の関与はなかった」と言い抜ける余地が広がった。

 在トルコのジャーナリスト(52)は、「着地点を探るトルコ側のシグナルである可能性もある。エルドアン大統領のサウジ批判は国内の野党批判に比べてソフトだった。政治的取引が念頭にあるのでは」と分析した。

 一方、欧米メディアの一部は10月末、ここ数年は主に英ロンドンに滞在していたサウジのサルマン国王(82)の弟、アハメド王子が帰国したと伝えた。

 王子は昨年6月、皇太子が副皇太子から昇格する際に反対したとされ、皇太子に自宅軟禁措置などに処されかねないと帰国をためらったが、空港では皇太子自身が出迎えたといわれる。

 70歳代のアハメド王子は長く内務副大臣を務めたが、王位後継者として帰国したのではなく、王室の団結を図るために帰国したとの見方が多い。半面、王子の帰国は事態を重視したサルマン国王が自ら収拾に乗り出したことを示すとみる向きもある。事件は王室を揺さぶる問題に発展している可能性もある。