島根・玉造温泉の老舗旅館「長楽園」 昭和天皇しのぶ御座所初公開 半世紀経て日本画家・橋本明治の掛け軸も

 玉造温泉(島根県松江市)の老舗旅館「湯之助の宿 長楽園」(長谷川浩司社長)は31日、昭和天皇が昭和40年と57年の島根県訪問で宿泊された御座所(ござしょ)「和泉の間」の一般公開を始めた。御座所は一度も公開されたことがなく、半世紀を経ての初公開。訪れた宿泊客らは思い思いに、昭和天皇と時代をしのんでいた。

 御座所を非公開としてきたのは、先代社長の強いこだわりがあったため。「昭和天皇がお使いになった部屋を一般に開放するのは控えたい」という雰囲気が続いていた。

 先代が亡くなった後も、現在の長谷川社長(51)が遺志を引き継いできた。しかし、昭和から平成になり、さらに来年には新元号となるのにあたり、「時代の流れの中で、激動の昭和を振り返るきっかけの場になれば…」と、公開に踏み切ったという。

 「和泉の間」と命名された御座所は、昭和40年5月の山陰地方ご巡幸で昭和天皇に宿泊していただくために新築。57年10月、くにびき国体で再び宿泊される際に移築・改装した。

 全体の広さは計860平方メートル。リビングとしてくつろがれた「御居間(おいま)」をはじめ、寝室、食堂、侍従長らが控える「控えの間(ま)」を含む11部屋などで構成され、京都の宮大工が建築を担当した。昭和天皇の最初のご宿泊から公開されないまま半世紀もの間、従業員が入ることも許されず、先代と現社長が数日おきに風通しをするなどの管理を続けてきたという。

 一般公開で注目されたのは、御居間の床の間に飾られた島根県浜田市出身の文化勲章受章者で日本画家、橋本明治の鶴の絵の掛け軸。橋本は、昭和40年5月、昭和天皇が山陰地方ご巡幸でお泊まりになるのをきっかけに描き、巡幸の3日間のみ長楽園に飾られた。この絵も半世紀を経てのお披露目となった。

 また、知事や県警本部長らが昭和天皇にお目にかかるための部屋だった「拝謁(はいえつ)の間」では、昭和天皇が座られた椅子に実際に座ることができ、訪れた人も腰をおろすなどして「昭和」を懐かしんでいた。

 近くに住む地元自治会の勝部廣三会長(69)は昭和天皇が座られた椅子に座り、「今まで感じたことのない、包み込まれるような感触だった」と感激していた。

 宿泊客らに500円で公開する。問い合わせは長楽園((電)0852・62・0111)。