ホンモノには兵庫県花の紋章
この問題には神戸ビーフのブランド化の歴史が関係している。
神戸開港とともに食肉文化が広まった明治時代以降、兵庫県内で農家の作業用に飼育されていた但馬牛の味が外国人に評価されたことから、但馬牛は「神戸ビーフ」として世界に知られるようになった。県北部にルーツを持つ但馬牛は地域柄、ほかの牛との交配がほとんどなかったといい、品質を維持するために血統を保った品種改良の取り組みが始まった。今では県が人工授精のための厳選した雄牛を管理している。
しかし、「どのような牛肉を神戸ビーフと呼ぶか」は正式に決まっていなかったため、昭和58年に神戸ビーフを定義・認定し、管理するために協議会が結成された。
協議会は、血統が保証された但馬牛の中でも、飼育環境や肉質などの厳しい条件を満たして出荷された牛肉を「但馬牛(但馬ビーフ)」と定義。さらに、その中から、霜降りなどの肉質について特別な基準を満たす牛肉のみを「神戸肉(神戸ビーフ)」と認定した。認定の証しとして1頭ごとに「神戸肉之証」を交付し、肉には県花「ノジギク」の紋章を押している。
そのため生きている「神戸牛」は存在しないことになり、神戸牛という名称自体がいわば俗称だが、「神戸肉」「神戸ビーフ」「神戸牛」はいずれも協議会が権利を持つ地域団体商標に登録されている。平成27年12月からは、地域の農林水産物や食品をブランドとして保護する政府の「地理的表示(GI)保護制度」でも守られている。