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高級和牛ブランド「神戸ビーフ」をめぐり、地元の関係者がブランド管理に苦慮している。外国人観光客(インバウンド)の増加に伴い、需要が急激に増えて価格が高騰。食肉の生産者や流通業者らでつくる認定団体「神戸肉流通推進協議会」(神戸市)は神戸ビーフの提供を保証する登録店の利用を促しているが、神戸の繁華街・三宮地区を中心に次々と現れる格安な「神戸ビーフの店」の勢いに押されている。こうした店の実態は不明だが、人気ブランドには必ずといっていいほどニセモノが現れる。本物の定義が消費者に浸透していない現状が混乱を招いているといえ、協議会は調査や発信力強化に力を入れる。知名度の高さゆえに加速を続ける「神戸ビーフ狂想曲」の裏側とは。(西山瑞穂)
正直者が「泣き」を見る
昨冬、協議会の担当者らが神戸市内で人気の老舗ステーキ店を訪れ、聞き取り調査した。この店は2種類のステーキを提供し、それぞれ「神戸牛」「特選神戸牛」と表記。しかし、協議会に「神戸ビーフにしては安い」との情報提供があり、調査に踏み切った。
聞き取りに対し、店側は「メニュー表記は昔からずっと同じように続けていたが、神戸ビーフではない和牛を使っている」と回答。協議会側は「協議会が認定していないものについて、神戸ビーフなどの紛らわしい表記をしないように」と指導した。
ある業界関係者は「老舗店の中には『神戸で提供するおいしい肉が神戸ビーフ』との考え方もある。ブランドの価値を高めるにはルールを守ることが前提で、ルール内で営業している店が泣きをみるのは問題だ」と危機感を募らせるが、協議会側は「一つ一つ調べるには人手が足りない」と打ち明ける。