「欧州の盟主」逆風に勝てず メルケル独首相引退表明…政権、一気に不透明感

 【ベルリン=宮下日出男】ドイツのメルケル首相は29日の記者会見で、2021年秋での首相引退と与党のキリスト教民主同盟(CDU)の党首選不出馬を表明した。政権への逆風にあらがえず、後継への道筋をつけることで混迷を収束させたい考えだが、逆に一層の求心力低下を招く恐れがある。政権の行方は一気に不透明感が強まった。

 「昨年(9月)の総選挙以降のすべての出来事の責任を私は引き受ける」。メルケル氏は29日の記者会見でこう語った。決断は、政策課題に「政府が集中できるようにすることが目的」とした。メルケル氏は05年に首相に就任以降、近年は「欧州の盟主」と称されるほどに存在感を高め、欧州を見舞った相次ぐ危機の対応のかじ取り役を担った。

 だが、転機となったのは15年の難民・移民大量流入問題。メルケル氏の寛容政策をたたえる声が上がる一方、難民・移民の受け入れ反対を掲げる右派、ドイツのための選択肢(AfD)が台頭。自身の与党内でも批判が高まった。

 連立政権の内輪もめの原因も発端は移民・難民政策をめぐる対立。メルケル氏は最近、移民・難民政策の議論に引きずられたままでは、「国民政党としての立場を失う」とも述べ、強い危機感を示していた。

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