主張

日中首脳会談 「覇権」阻む意思が見えぬ 誤ったメッセージを与えた

 ≪中国の脅威は減じない≫

 安倍首相は対中ODA(政府開発援助)について「歴史的使命を終えた」と述べて終了する方針を示した。これ自体は当然としても、新たな経済協力へと一足飛びに進む理由にはなるまい。

 日本は欧米とともに対中包囲網を強めようとしてきたはずだ。これとの整合性はあるのか。

 安全保障分野の「関係改善」にも疑念がある。日本にとって最大の脅威が中国なのは明らかだ。

 両首相は「日中は互いに脅威とならない」と確認した。海空連絡メカニズムでホットラインの設置協議も決まった。

 尖閣諸島をめぐり、安倍首相が李首相に「東シナ海の安定なくして真の関係改善はない」と伝えたのは当然だ。だが、これだけで脅威を構成する中国の「意図」と「能力」が減ずるだろうか。

 中国は尖閣を奪う意志を取り下げていない。周辺領海への中国公船の侵入などを首脳会談の主題にすべきだった。中国の軍拡や日本に向けられた弾道・巡航ミサイルの問題は論じたのか。南シナ海の人工島の軍事拠点化の問題もある。刃(やいば)を突きつけられた中での友好などあり得ない。

 安倍首相はウイグル問題を念頭に「国際社会が人権状況を注視している」と伝えたが、協力が強調された中で懸念は伝わったのか。北朝鮮の非核化や拉致問題を含め真剣な協力相手たり得るのか。

 これらを棚上げにして日中の首脳が笑顔で握手しても、真の友好は築けまい。中国は国際情勢次第で対日姿勢を変えてきた。ムードに流された関係改善は、砂上の楼閣に等しい。