主張

日中首脳会談 「覇権」阻む意思が見えぬ 誤ったメッセージを与えた

 日本は、天安門事件で国際的に孤立した中国にいち早く手を差し伸べ、天皇陛下の訪中や経済協力の再開に踏み切った。だが、日中が強い絆で結ばれるという期待は裏切られた。その教訓を生かせず二の舞いを演じるのか。

 日中は、経済や安全保障を含む幅広い分野で協力を強化する。象徴的なのが、両国以外の第三国でのインフラ開発協力だろう。

 両政府の呼びかけに応じ、日中の企業は事業を共同展開するため50件を超える覚書を締結した。中国の巨大経済圏構想「一帯一路」を念頭に置いた協力である。

 一帯一路は経済、軍事面で自らの勢力圏を広げるための国家戦略だ。相手国を借金で縛る手法は「新植民地主義」と評される。

 安倍首相は開放性や透明性などが協力の前提と指摘したが、日本の技術や資金が中国の膨張主義を支える構図に変わりはない。何よりも中国が、一帯一路への各国の批判をかわす根拠として日本の協力を利用することを危惧する。

 金融危機時に双方が通貨を融通し合う通貨交換協定の再開でも合意した。米中貿易戦争で中国経済の不安が高まる中、市場の安全網を敷く狙いだろう。だが、中国が優先すべきは国家の恣意(しい)的な市場介入を改めることだ。そこが不十分なまま、大々的に金融協力を行うのには違和感を覚える。