奈良市の旧市街地・ならまちに、かつて酒蔵だった築130年の古民家を改修した高級ホテル「NIPPONIA(ニッポニア) HOTEL 奈良 ならまち」(奈良市西城戸町)が11月1日、オープンする。富裕層をターゲットに、元酒蔵の特長を生かした料理やサービスを提供。清酒発祥の地とされる奈良の魅力をアピールする。
同ホテルはもともと、創業150年の歴史を誇る「奈良豊澤酒造」(奈良市)の酒蔵だった。昭和10年ごろまで酒造りをしていたが、落雷で被害を受けたことをきっかけに移転。その後は本社や住居として使用していたが、近年は空き家になっていた。
奈良豊澤酒造の豊澤孝彦社長は「奈良らしいやり方で建物を活用できないか」と、外観をそのままに再生する方法を模索。日本酒の歴史や魅力を発信するホテルとして生まれ変わり、バリューマネジメント(大阪市)が運営することになった。
建物の内装も原状を最大限維持し、はりや骨組みのほか、砂壁や収納付きの箱階段をそのまま残したのが特徴。県産のスギやヒノキを使い、手を加えた部分も可能な限り元に戻せるよう配慮している。改修を手がけた才本建築事務所の才本謙二代表取締役は「奈良の昔ながらの特徴的な町家づくりを生かしつつ、当時の生活を感じられるように仕上げた」と胸を張る。
客室や料理で使用する水は、日本酒造りに使われていた井戸水。予約すれば、酒かすを溶かした「酒かす風呂」にも入浴できる。レストランで提供する料理は日本酒とのマリアージュを意識しており、奈良漬や酒かすを使い、和食の技法で調理されている。日本酒はすべて奈良豊澤酒造のもので、市場には出回らない新酒の一番搾りを飲むことができる。
近鉄奈良駅から徒歩8分。客室は8室で敷地面積は1766平方メートル。2名1室利用で、1人1泊2食付2万8千円(税・サービス料別)から。レストランのランチは5千円、ディナーは1万円から。問い合わせは同ホテル(電)0120・210・289。