上空の小型無人機「ドローン」からレーザーを山中に照射し、遭難者が着た反射ウエアからはね返ってきた光をとらえて位置情報を把握する探索システムを、近畿大理工学部(大阪府東大阪市)の前田佳伸教授(光エレクトロニクス)らが開発した。本格的な秋山シーズンを迎え、遭難事故も危惧されるなか、探索システムを活用すればピンポイントで遭難者を見つけ、早期救助につながることが期待される。
探索システムでは、ドローン用計測機器を開発するアミューズワンセルフ(大阪市)のレーザースキャナーシステム(重さ約1・8キロ)を搭載したドローンを使用。上空からレーザーを照射することで高精度に地形を測量できる同社の技術を応用し、地上でレーザーの光をはね返した場所を衛星利用測位システム(GPS)で特定しパソコン上で確認するという仕組みだ。
前田教授らは今年7月から登山者の名前や住所などの個人データを記録し、レーザーの光を反射する特殊なQRコードを開発。反射ウエアに取り付けた。
大阪府能勢町の山林で9月26日に行った実証実験では、このウエアを身につけた学生が山中を移動。上空約150メートルを飛ぶドローンからレーザーを照射したところ、学生の位置を正確にとらえ、QRコードのデータも読み取って個人を特定した。
警察庁の統計によると、山岳遭難事故での遭難者は昨年1年間で3111人で、死者・行方不明者は354人。平成20年比で遭難者は1178人、死者・行方不明者は73人増えた。今年も、キノコ狩りで山に入った高齢者らが遭難する事故が多発している。
これまで山岳での遭難者の捜索は、有人ヘリコプターや地上から捜索隊が出動するなどして救助に向かっていたが、悪天候による二次遭難の危険性や、高額な費用がかかることなどが指摘されている。
前田教授は「多少の雨天でも飛行可能で、早期発見により生存率のアップや捜索費用の負担も軽減できる。今後は製品化を目指すとともに登山者への普及活動に努めたい」と話している。(勝田康三)