聞きたい。

岩田温さん 『政治学者が実践する 流されない読書』 根底から揺さぶられる体験を

【聞きたい。】岩田温さん 『政治学者が実践する 流されない読書』 根底から揺さぶられる体験を
【聞きたい。】岩田温さん 『政治学者が実践する 流されない読書』 根底から揺さぶられる体験を
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 深い愛情が脈打つ「読書のすすめ」である。執筆にあたっては著者が勤務する大学の授業や弁論部の指導で接する若者が念頭にあったことは想像に難くない。

 読書体験を通した著者の半生記としても読める本書には、斜に構えたところがいっさいない。人生にとって読書がいかに大切であるかを体験に基づいて説き、これから本の大海に乗り出そうとする者に心得ておくべき航海術を授ける。

 「人生で一度も本を読み切った経験のない学生もいます。そんな学生にも楽しんでもらえるように書いたつもりです。加えて反リベラルというレッテルを貼られてしまった私の異なる面も知ってほしいと考えました」

 「リベラル保守」と自己規定する。人間の多様性を認めたうえで、いかにわが国の歴史や伝統を受け継いでゆくか葛藤したいと考えている。ゆえに、自分と思想的立ち位置の異なる人の著作も積極的に読む。また、天使と悪魔の心を併せ持つ人間が織りなす政治を、シェークスピアやドストエフスキーの文学を通して読み解こうとする。そんな著者だから、ヒトラーのような自分の世界観を強化するための読書を拒絶する。

 「根底から揺さぶられる体験が読書の醍醐味(だいごみ)でしょう。自分の思想に合ったものしか読まないなんて愚の骨頂です。残念ながらいまの世の中は、保守もリベラルもそうなっている。だから、議論はかみ合わず、ともに停滞している」

 本書の最後で、著者は沖仲仕の哲学者と称されるエリック・ホッファーを紹介し、《満足するのでも、絶望するのでもなく、人間とは何か、人間の幸せとは何かを探究し続けるところに人生の妙味があるのではないでしょうか》と記す。よき人生を生きようとする者にとって、読書こそが最良のパートナーなのだ。本書は間違いなく第一級の「読書論」である。(育鵬社・1400円+税)

 桑原聡

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