これが医学部入試の「常識」なのかと不信が増しただけである。今度は昭和大学が記者会見して得点操作を認めた。2浪以上を不利にしたほか、卒業生の子弟を優先的に合格させていた。
不正とは考えず、学内でも異論はなかったという。その認識のなさが厳しく問われよう。他にも疑いを持たれている医学部がある。これでは受験生も安心して次の入試に臨めない。
昭和大は平成25年以降、一般入試の面接や小論文による2次試験で高校の調査書を評価する際、現役に10点、1浪に5点を加算し、2浪生以上を不利にしていた。
また入試日程の遅い2期試験で、補欠の中から同窓生の子弟ら親族を優先していた。
汚職事件をきっかけに入試不正が発覚した東京医科大と似た構図である。
「女子受験生への差別は一切ない」と強く否定したが、文部科学省の調査で表れた数字について納得のいく説明ができるのか。
過去6年の入試の合格率で男子が女子より「1・54倍」と開きがあった。順天堂大(1・67倍)などに続き、東京医科大(1・29倍)より差が大きい。
これまでの文科省の調査に対しては、多浪生を不利にする得点操作を含めて、不正はないと答えてきた。
柴山昌彦文科相は「事前の照会には不適切でないと回答しており、大変遺憾だ」と批判した。同省はこの嘘を許してはならず、率先して究明にあたるべきだ。
昭和大は、不正の認識について「見解の相違」があったとし、その検証は第三者委員会に委ねるという。不正を不正と認識しないなら、いくら外部調査を仰いでも再発防止につながるだろうか。
現役生や1浪生の方が入学後の伸びがいいため「将来に対し加点した」などとも言う。それも人によるだろう。
「総合的に評価」しようとしたとの言い訳も通らない。機械的に得点操作するなら面接などをする意味はなかろう。
結局、医局などで言うことを聞く使いべりしない働き手が必要ということなのか。これで優秀な人材が集まるだろうか。患者が望むのは、まわり道をしても痛みを知る医師である。その養成の場にさまざまな経験ある者が集まり、切磋琢磨(せっさたくま)した方がよい。