産経抄

10月17日

 巨人がセ・リーグのCSファーストステージ突破を果たした立役者は、ノーヒットノーランの菅野智之投手である。ただ第1戦で力投した上原浩治投手の貢献も大きい。上原投手はスター選手では珍しく、大学浪人を経験している。

 ▼浪人時代は、警備員などのアルバイトをしながらウエートトレーニングに励んだ。野球をやりたいという強い思いが、後に成功する大きな要因となる。もっとも、他の学部に比べて極端に難関の医学部では、1浪は現役とほぼ同じ扱いらしい。

 ▼昭和大学は15日に会見を行い、医学部の入試で同窓生の親族を優先して合格させていたと発表した。現役や1浪の受験生に加点して、2浪以上が不利な扱いを受けていた事実も明らかになった。「現役や1浪の方が将来性が高い」。これが医学部長の釈明である。

 ▼大学によれば、得点操作は平成25年から始まった。天皇陛下の心臓手術が東大病院で行われたのは、その前年である。執刀チームの中心となった心臓外科医の天野篤(あつし)さんは、時の人となり、技量の高さは「神の手」とたたえられた。

 ▼同時に話題になったのが、3浪して日本大学医学部に入った天野さんの学歴である。スタートの遅れを挽回するために、「人の3倍」働いて8000人近い命を救ってきた。浪人中にはまったパチンコも、結果的には手術の腕を磨くのに役立ったと振り返る。天野さんのおかげで、医師の能力は学力とは別物だと、世間は納得したはずなのに。

 ▼天野さんは現在、順天堂大学医学部付属順天堂医院長を務めている。その順天堂大は、過去6年の平均合格率で男女の差が全国で最も大きく、やはり不正の疑いがもたれている。医学部入試の病巣はどこまで広がっていくのか。

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