すばらしい功績です! この賞が世の中に存在していること自体、すてきなことだと思います。
受賞者にとって、この賞を受賞できたことは間違いなく光栄なことだったと思いますし、今現在でも光栄に思っていると思います。皆、自分の信念や生きがい、人生を懸けて活動していますから。過去の受賞者のリストを見ると、さまざまな異なるバックグラウンドを持つ方ばかりで、個性も非常に強いです。生き方も作品も全く異なり、それぞれ独自の世界の中で生きています。しかし、それぞれを合わせてみてみると、時代を見事に反映しています。このような意味で、私たち芸術家はそれぞれの強みをもって世界の文化に貢献をしているといえます。これにより個々人や人間の存在意義について、全く異なる形で明らかにしているのです。個人でもある程度は行うことが可能ですが、複数人が合わさることによって全く異なる規模で行うことができます。これを成し遂げたという点で、高松宮殿下記念世界文化賞は非常に素晴らしく、驚くべき功績を残したとも言えます。
文化や芸術が人類にいかにパワーを与え、重要なものかを示している賞だと思います。歴史を振り返ってみると、恐ろしく暴力的な独裁者が自らの強さや兵士をもって世界を制したことが目につくかもしれません。しかし、注意深く見てみると、人間の歴史が変わり、新たな方向性へと導かれたのは、文化や芸術が発展したときです。老子、孔子、ウパニシャッドの著者たち、アリストテレス、ソクラテス、ジョット、レオナルド・ダビンチなどは、各時代の皇帝、王、将軍、伯爵とは全く異なる人類の未来を示し、人間の存在意義をより明らかにしました。
そのため、営利主義や経済と軍事力に支配された政治に導かれて物質志向となった今の時代を見ると、非常に悲しく思います。自然科学の分野では、過去500年の間、大いなる進歩を遂げてきました。物理学、天文学、薬学などにおいて、100年前には想像できなかったようなことを実現してきたのです。以前は今日のように病を治療することは不可能でした。しかし、理性や物質的な身体を超えたところに別の世界が存在します。過去、現在、未来のどの時代の人類も持っていた非常に豊かな世界です。自然科学が進歩したことにより物質的にも豊かになり、人類史上、想像し得なかったほどでしょう。しかしこの物質的な豊かさに満足しないことにより、物質的ニーズから解放された世界で生きられる可能性もあります。