台風21号の影響でまひした関西国際空港の物流機能は、被害発生から1カ月を経て正常化しつつある。3日には医薬品物流を支える倉庫の荷受けが再開。成田空港などに出荷を振り分けていた企業は関空に戻り始めている。ただ、倉庫の修復が終わっていない航空会社もあり、完全復旧にはなお時間がかかりそうだ。
■「オプジーボ」輸出再開へ
「貨物地区では多くのトラックが貨物を運んでいる。お客さまにもう一度使っていただけるよう営業に力を入れたい」。関空を運営する関西エアポートの山谷佳之社長は3日の記者会見で復旧の手応えを語った。
関空が注力する医薬品物流では、専用の定温倉庫が1日から稼働し、3日に荷受けも再開。小野薬品工業は一度、他空港に振り替えたがん免疫治療薬「オプジーボ」の輸出を今月中に関空へ戻すと決めた。
電子部品関連でも、ロームは成田空港や中部国際空港に振り分けていた出荷を今月に入ってすべて戻した。京セラも関空からの出荷を7~8割再開した。
■全日空は冷蔵設備使えず
航空会社では、日本航空の貨物便運航スケジュールや貨物取り扱い能力は今月、従来通りに戻った。一方、倉庫に大きな被害を受けた全日本空輸は、冷蔵設備が使えない状態が続き、貨物取扱量は台風前の3割程度にとどまる。
貨物の大半を成田に振り替えているパナソニックでは、輸送コストの増加が課題になっている。「完全に元通りになるには、まだまだ時間がかかる」とし、他空港への振り替えが長期に及ぶ可能性も考慮している。
■損害保険の査定、複雑
台風21号による被害の復旧が進む中、建物や設備などの損害の補償や費用負担が課題となっている。
企業が契約する損害保険は多くの場合、水害など自然災害もカバーする。関西国際空港を運営する関西エアポートや、空港関連施設を保有する新関空会社も、復旧費用は保険で一定程度補償されるとみられる。
ただ補償内容や適用範囲は契約で細かく規定され、複数の損保会社で保険を引き受けている場合もあるため、保険内容の精査や損害額の査定手続きは複雑だ。保険金の支払いには、数カ月以上かかる見込みという。
タンカーが衝突し損壊した関空連絡橋への補償は、道路部分を管轄する西日本高速道路とタンカー運航会社の話し合いが始まっていない。西日本高速は損害賠償請求に向けて国や関係機関と調整する構えだ。
一方、関空サイドには国に復旧費用の補助を求めたい考えもある。安倍晋三首相は、9月の台風21号や北海道の地震による被害に対応するため補正予算案を編成する考えを示している。