□『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる』『ハプワース16、1924年』
20世紀青春小説の金字塔『キャッチャー・イン・ザ・ライ』で知られる米作家J.D.サリンジャー。長い隠遁(いんとん)生活を送った伝説の作家の最後の作品「ハプワース16、1924年」をはじめ、米国では単行本に入らなかった計9編を新訳で収める。
もう一つの表題作「このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる」の舞台は、ジョージア州の基地にあるトラックの中。目前に迫ったダンスパーティーのことであれこれ悩む軍曹が、戦闘中に行方不明となった弟ホールデンに思いをめぐらす。ポップな文章を紡いだ作家が抱えていた戦争の深い傷も伝わる。(J.D.サリンジャー著、金原瑞人訳/新潮社・1500円+税)