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そうした政界のムードを経済界も敏感に感じ取っている。
「国のガバナンスが機能していない」
「政治と官僚、ともに機能不全に陥っている」
長野県軽井沢町で7月12日に開かれた経済同友会の夏季セミナー。「消費税率引き上げへの道筋と財政規律強化」をテーマに行われた討論会は、避暑地の清涼さが嘘のように企業経営者らの熱気があふれていた。
討論会の終盤、小林喜光代表幹事は「(消費税は)最低14%くらいは要るだろう」と主張した。
国の歳出の3分の1を占める社会保障関係費の伸びは、28~30年度の年間6500億円から、団塊の世代が75歳を超え始める34年度以降は9千億円に膨らむ。「14%」は、政策に必要な経費を税収でまかなえているかを示す基礎的財政収支を37年度までに黒字化するために最低限必要な数値だという。
小林氏がこうした主張を繰り返す背景には、政府の財政健全化計画への不信がある。特に懸念するのは、6月に決定した財政健全化計画が実質2%、名目3%以上の高成長を前提としている点だ。米中貿易摩擦の激化など景気の下押し要因が散在する中で、あまりに楽観的な見通しと映る。
首相が総裁選で連続3選を果たしたことで、任期は33年までになった。
財務省からは「実際に次の増税をやるのは『ポスト安倍』なので、この3年間に10%の後の議論だけでもできるのではないか」(幹部)との声が上がる。だが、菅氏はさらなる税率引き上げの検討について「考えていない」と繰り返している。
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この企画は、玉崎栄次、田村龍彦、千田恒弥、西村利也、山口暢彦が担当しました。