10%への壁 消費増税まで1年

(下)安倍晋三首相は増税実施に意欲…それでもくすぶる再々延期論

 「議論を尽くして政府・与党で決定し、法律ができている。法律に従って、どう円滑に実施できるかに努力を傾注すべきだ」

 公明党の山口那津男代表は今年5月、軽減税率導入に慎重論を唱えた自民党の石破茂元幹事長に、色をなして反論した。生活必需品の税率を据え置く軽減税率は、公明党が導入を主張した経緯がある。

 教育無償化も衆院選公約に掲げており、山口氏は9月19日の記者会見で「消費税率引き上げと使途変更、特に教育負担の軽減を図る。これをやり遂げなければならない」と訴えた。

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 一方で、自民党内には増税中止を求める意見がくすぶっているのも事実だ。

 若手国会議員でつくる「日本の未来を考える勉強会」(呼びかけ人代表・安藤裕衆院議員)は5月、消費税率10%への引き上げの凍結を求める提言を発表した。不定期で会合を開いており、ある参加者は「(首相官邸からも)『どんどんやれ』といわれた」と意気盛んだ。

 野党側も政権の増税方針を牽制する。立憲民主党の枝野幸男代表は9月3日の記者会見で「経済状況や、税金の使い道に対する国民の信頼度。こうした経緯を考えたとき、予定通り消費税を上げられる状況ではない」と断言した。

 国民民主党の玉木雄一郎代表も増税反対は明言しないものの、「民主党政権の反省は役人の言うことを聞き過ぎたことだ」と述べ、少子化対策の財源を国債発行でまかなう考えを示す。

 来年は消費税率引き上げを前に参院選や統一地方選が行われる。消費者の財布を直撃する消費税率アップの是非が選挙の争点になれば、与党議員は苦しい戦いは避けられない。選挙が近づくにつれ、再々延期論が強まりかねない。

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