9月19日夜。自民党総裁選の投開票を翌日に控え、党のインターネット番組に出演した安倍晋三首相は視聴者の「消費税を上げないでほしい」という声に苦笑しつつ、こう回答した。
「私もできれば上げたくありません。それは本当にそうなんですが、昨年の衆院選で約束した幼児教育の無償化を来年10月から始め、再来年、高等教育の無償化をスタートするには、やはり消費税を上げなければなりません」
首相はかねて消費増税による財政再建に慎重な立場を取ってきた。増税に拘泥するあまり、景気を腰折れさせてしまってはデフレ脱却の道が閉ざされてしまうからだ。増税しなかった場合の金利上昇や国債暴落をあおる財務省に対しても不信感が強かった。
民主党政権下の平成24年8月に成立した社会保障・税一体改革関連法は27年10月に消費税率を10%に引き上げるとした。だが、26年4月の8%への引き上げで景気は失速する。財務省の見立てとは逆だった。首相は26年11月、1年半の引き上げ延期を表明した。さらに28年6月、再び31年10月までの延期を発表した。
ただ、昨年10月の衆院選で、幼児・高等教育を無償化し、消費税率引き上げの増収分をその財源とする使途変更を公約に掲げ、国民の支持を得た。公約を棚上げしてまで再々延期を決断するのは政治的リスクが大きい。菅義偉官房長官も「リーマン・ショック級(の景気悪化)がない限り引き上げる」と明言する。
自民党と連立を組む公明党への配慮もある。