正論10月号

安倍氏三選の意義 これをやらずに何をやる スパイ防止法は世界の常識 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・宮家邦彦

※この記事は、月刊「正論10月号」から転載しました。ご購入はこちらへ。

 自民党は、外国の諜報員に諸外国なみの厳罰を科すことなどを可能とする「スパイ防止法」の制定を急ぐべきである。昭和60年に自民党議員らが議員立法で提出したが、当時は野党の強い反対で廃案となってしまった。あれから33年。わが国を狙った外国スパイの脅威は減少するどころか形を変えて高まっており、与党は「国益を守る」という責務に正面から向き合うべき時を迎えている。

諜報に「素人」を使う中国

 日本において社会が安定し、かつ、国民の基本的人権が守られていることは論を俟たないが、それは全て、長年をかけて確立されたルールとシステムの後ろ盾があってのことである。その根幹部分を敵国に攻撃されたり、奪われたら最後、日本社会の安定と国民の人権は根底から簡単に崩されてしまうだろう。

 欧米ではジェームズ・ボンドのようなプロを敵国に送り込んで、機密情報を盗ませることが今も諜報活動の主流だが、最近は敵国に入らずして、サイバー空間を使って盗むケースも増えている。プロに対する警戒を継続すべきことは言うまでもないが、インターネット社会になった現代では、後者の脅威が高まっていくことは間違いない。

 また、サイバー空間の利用とともに、「欧米型とは違う諜報」として近年注目されているのが摘発の難しい「素人」を「人海戦術」で繰り出す中国のケースである。

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