しかし、そうした見方は、これまでのアベノミクスの「成功」が輸出によって支えられてきたことを無視しがちだ。
折しも、激化しているのが米中貿易戦争である。トランプ大統領は中国に対して制裁関税というトランプ弾を連射しているが、公約は「米国第一主義」であり、対外貿易赤字全体の削減である。不公正貿易慣行やハイテク窃取、さらに対米貿易黒字で稼いだドルで対外膨張策を展開する中国が最大の標的には違いないが、トランプ氏は中国、メキシコに次ぐ貿易赤字相手国日本に対しても強い不満を表明している。
安倍政権側は2国間協議に応じ、農産物関税引き下げなどを提示するつもりだが、トランプ政権側は時間稼ぎとみて対日批判を強めている。日本車の輸入関税引き上げ、あるいは日銀政策まで制約を受けかねない「為替条項」導入を迫られる恐れがあるが、日本側は絶対拒否の構えである。となると、日米間に隙間ができてしまい、対峙(たいじ)しなければならない中国の脅威に対し結束が乱れてしまう。
今後、米中貿易戦争のマイナス効果が世界に本格的に表れる。輸出に極度に依存する日本経済は、10年前のリーマン・ショック後がそうだったように、国際経済情勢激変に対して脆(もろ)い。消費税増税中止は当然だ。(産経新聞特別記者・田村秀男)