小欄は、先の自民党総裁選で1年後の消費税増税が既定路線として扱われていることに警鐘を鳴らしたところ、安倍晋三首相周辺を含め多くの読者から賛同する声が寄せられた。(夕刊フジ)
折しも米中貿易戦争が激化している。ボーッとして増税する場合か。
グラフはアベノミクスが始動して以来の日本の輸出と正味の家計消費の前年比推移である。家計消費は消費税率アップのたびに名目額がかさ上げされるため、消費税分を差し引いて算出した。一目瞭然、アベノミクスがもたらしている景気回復は輸出主導である。
2018年度(4~6月期の年率値)を12年度に比べると、輸出は国内総生産(GDP)を6・5%、32兆円余り押し上げたのに対し、正味家計消費のそれは0・7%、3・5兆円弱に過ぎない。14年度以降でみると、輸出は22兆円弱増となったが、正味家計消費は4・9兆円減った。
家計消費に代表される内需は増税と緊縮財政によって強く押さえつけられている。異次元金融緩和政策がもたらす円安と米景気の拡大の相乗効果で輸出が伸び、設備投資や求人倍率上昇が支えられるという構図である。
予定通り消費税率10%実施を安倍首相に勧める向きは、求人倍率が1974年1月以来の水準まで高まった有効求人倍率を根拠にしている。雇用情勢が逼迫(ひっぱく)化している中では、家計消費が受ける増税ショックは一時的で軽く済むとみるわけだ。首相の言う教育無償化の財源も確保できるし、財政再建にも役立つ、といいことずくめの楽観論である。