世界2位の13億の人口を抱え、毎年7%を超える経済成長を遂げるインド。世界が注目する次の大国だが、伝統的に振るわないのがスポーツの成績だ。リオデジャネイロ五輪の獲得メダルはわずか2個と、人口規模から考えれば寂しい数といえる。インド政府は2020年東京五輪を見据えた強化策に乗り出したが、「巨大な国なのにメダルがなぜ少ないのか」という素朴な疑問からは、インド社会の現状と課題が見えてくる。
独立以来のメダル「23」
「東京では2桁のメダルを獲得したい」
インドオリンピック委員会(IOA)のナリンデル・バトラ会長は、2020年の目標を話した。日本人の感覚では控えめにも思えるが、過去の実績を振り返れば、十分に野心的な数字であることが分かる。
1947年の独立以来、インド選手団が夏季五輪で獲得したメダルは計23個。元競泳のマイケル・フェルプス氏(米国)が現役中に獲得したメダル(28個)より少ない。リオ大会の銀1、銅1という結果は、人口にして約430分の1のモンゴルと同じだ。バトラ氏は「過去の成績が13億の人口にふさわしいものではないことは知っている」と現状を語る。
第二次世界大戦後の東西冷戦期、米国やソ連、東欧諸国などは国威発揚の観点からスポーツ振興に力を注いだ。いずれの陣営にも属さない非同盟主義を貫いたインドは、そんなスポーツ戦争にも加わらず独自の道を歩んだ。「スポーツへの予算不足から、特に競技場や練習施設の整備が進まなかった」とバトラ氏は解説する。
やり投げ選手が生えていた木を切ってやりを作ったとか、リュージュの選手は、板に滑車を付け、ヒマラヤの急な坂道を滑って練習したといった逸話も残る。経済成長を遂げつつある今、「ようやく国全体がスポーツ振興に目が向き始めた」というのが、関係者の一致した見解だ。