横浜市郊外の大型スーパーに設けられたイートインコーナーは、家族連れの買い物客でにぎわっていた。9月下旬。消費税増税まであと1年余りだ。週末に長女(3)を連れて家族でイートインコーナーを利用するという主婦(31)=横浜市=は増税について「イートインで食べるのは、割高になる感じ。増税後は持ち帰って食べるようにするかも」と話す。
増税にあたり、食料品には消費税率を据え置く「軽減税率」が導入される。肉や野菜などの食材、調味料に加え、パンや弁当、ジュースが対象で、税率は8%のまま。だが、外食は対象外で、スーパーで買っても店内のイートインで飲食すれば外食扱いの10%となる。
税率は支払いをする時点で決まる。8%と10%のどちらを適用するかは、レジで客の意思表示に委ねられる。しかし、この「性善説」に基づいた制度に落とし穴がある。税負担を嫌い、「持ち帰り」で支払いを済ませた商品を店内で飲食するケースが出る可能性があるのだ。
支払い後に「気分を変えた」と言われれば、それまで。違法でないにせよ不公平感は残る。生活に密着したスーパーが、そんな少額脱税の温床になりかねない。
大手スーパーの運営会社では、消費税増税後の店舗向けマニュアル作成に向け社内で議論が始まった。だが、参加する女性社員(29)の言葉には苦しさがにじむ。「買い物に来てくれたお客さまを疑って声かけするわけにもいかない。半分食べて、半分持ち帰る場合はどうすればいいのか。線引きは難しい」