島根・瑞穂ハンザケ自然館、オオサンショウウオで国内初「完全屋内」人工産卵に成功

 国特別天然記念物のオオサンショウウオを、外部の影響が遮断された環境で産卵させることに、島根県邑南町の瑞穂ハンザケ自然館が成功した。完全屋内環境での人工産卵は国内初で、生まれた卵が有精卵であることを示す「卵割」も確認された。同館は「人工繁殖の方法が確立できれば、環境が悪化し自然災害が増加する中、『種の保存』に大いに役立つ」としている。

 同館では、オオサンショウウオの人工孵化(ふか)に取り組んでおり、国内有数の実績を持つ。平成28年からは、自然界から遮断された完全屋内環境での人工孵化に挑戦。LED照明を光源とすることで、成功にこぎ着けた。

 広島市安佐動物公園(同市安佐北区)で生まれたペアを使って研究を行い、今月13日早朝、人工巣穴の中に卵約200個を生んでいるのが確認された。翌14日には、卵細胞が分裂する卵割と呼ばれる現象も見られ、孵化につながる有精卵であることが確認された。順調に進めば、10月中旬に孵化する見通し。

 人工孵化の研究を手がける伊東明洋学芸員は、昨年の取り組みでうまくいかなかった原因を「光にある」と推測。今回は、他施設で行われていたアユの電照飼育をヒントに、LED照明を5つ使い、タイマーを駆使してより自然に近い昼夜の環境を作り出し、産卵につながったという。

 伊東学芸員は「生息環境の悪化に加え、近年は自然災害の深刻化もオオサンショウウオの繁殖にとって心配な材料。屋内での人工繁殖は難しいが、今回成功したことで可能性が広がった」と話している。

 日本ハンザキ研究所(兵庫県朝来市)の栃本武良理事長は「トキやコウノトリと同じ特別天然記念物でありながら、オオサンショウウオは残念なことに保護活動が盛んではない中で、瑞穂ハンザケ自然館が大きな成果を挙げた」と評価。「今回成功した光やエサ、水温などの飼育条件を明確にできれば、今後多くの施設で応用が可能になる」と期待する。

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