再度の現地視察へ
火山灰以外での立証を求められた北電は試行錯誤を繰り返し、その説明が規制委からようやく評価されたのは、今年8月31日の審査会合だった。石渡氏は「今回出していただいたデータは従来と比べるとだいぶん見通しが良くなり、全体が分かるようになってきた」と述べ、「もう少しまとめ直してもらった上で、野外で実際に見せてもらうことが評価するのに必要だ」と、再度の現地視察を要望した。
北海道でブラックアウトが起きたのは、この6日後のことだった。
泊原発と同時期に審査申請した関西電力大飯原発、高浜原発、四国電力伊方原発、九州電力玄海原発、川内原発は、いずれも再稼働を果たしている。これらはすべて加圧水型(PWR)で、泊原発は業界で「最後のP」という皮肉な称号を与えられている。
泊原発が再稼働していれば、ブラックアウトは防げたのか。北電は「再稼働後の発電量などの仮定が多すぎて、答えられない」という。ただ、苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所に道内の電力供給の過半を頼る一本足打法の状況が、大きく違っていたことは間違いないだろう。
規制委の更田(ふけた)豊志委員長は、地震発生後の9月12日の定例会見で、「今回の地震を受けて、泊発電所の許可を急がなければならないとは毛頭考えていない」と述べた。当面は規制委が「雪が降る前にやりたい」とする現地視察が審査のヤマになる。前回はちゃぶ台返しがあったが、今度はどうか。ブラックアウトを経験した道民の目が注がれている。
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北海道電力泊原発 北海道泊村にある加圧水型軽水炉(PWR)。1号機(57万9000キロワット)は平成元年6月、2号機(同)は3年4月、3号機(91万2000キロワット)は21年12月に営業運転を開始した。1~3号機とも25年7月、原子力規制委員会に安全審査を申請し、現在は3号機が優先的に審査されている。