Q 71歳の女性です。5年前に手術した直腸がんの定期検診で造影コンピューター断層撮影(CT)を受け、乳がんが見つかりました。1カ月前、右乳房全摘術を受け、病理診断の結果、大きさ6・5ミリ、リンパ節転移なし、ホルモン受容体陰性、HER2陽性、Ki67値20%で、浸潤性乳管がんの診断でした。主治医から、再発予防の術後補助化学療法「パクリタキセル(抗がん剤)+ハーセプチン(分子標的薬)」を提案されています。B型肝炎ウイルス検査で抗原が陽性で、高齢でもあり治療に耐えられるか不安です。受けた方がいいでしょうか。
A 大きさが6・5ミリで、リンパ節転移なしなら、がんとして早期であり、一般に再発リスクは高くありませんが、HER2陽性ということは、乳がんの性質として再発リスクが上がります。そのため1センチ未満でも、術後化学療法が推奨されています。
「パクリタキセル+ハーセプチン」の試験には、70代以上の患者さんも10%以上入っており、71歳でも治療は可能です。年齢よりは心臓、肝臓、腎臓、運動機能を含めた全身状態が重要です。B型肝炎で抗原が陽性の場合は、抗がん剤を使った治療を行う際に血液検査をしながら抗ウイルス薬が必要になります。ハーセプチンは効果が高い薬で、使用のメリットはありますが、病状からは、治療なしでも8割以上は再発しないと考えられます。病気や全身状態などを総合的に考え、主治医とよく相談して決めてください。
Q ハーセプチン単剤では?
A 最近、高齢者のHER2陽性乳がんに対する術後補助療法として、ハーセプチン単剤と抗がん剤併用とを比較した日本人の臨床試験データが発表されました。今後、ハーセプチン単剤も検討されていくと思いますが、現時点ではまだ評価が不十分です。
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回答には、がん研有明病院の上野貴之乳腺外科部長が当たりました。カウンセラーによる「がん電話相談」(協力:がん研究会、アフラック、産経新聞社)は、(電)03・5531・0110。月~木曜日(祝日は除く)午前11時~午後3時。相談が本欄に掲載されることがあります。