イラク住民投票から1年 クルド早期独立は遠く 自治政府、強硬路線を転換

 【カイロ=佐藤貴生】イラク北部のクルド人自治区で独立の賛否を問う住民投票が行われてから、25日で1年となる。賛成が90%以上と圧倒的多数を占めたものの、首都バグダッドの中央政府が報復に出て、クルド側は「敗北宣言」に追い込まれた。自治区では30日投票の自治議会選に向け選挙運動が盛んに行われているが、「独立は当面不可能」との認識が広がり、早期の独立実現から、中央政府への関与を通じて発言権を強める路線への転換が進んでいる。

 「街には自治議会選の立候補者の選挙ポスターがあふれている。経済は落ち着きを取り戻したが、生活は決して楽ではない」。自治区の最大都市アルビルに住む男性がSNSを通じ、街の様子を語った。

 在アルビルの西側外交筋は「独立が最終目標である点で(各政治勢力や有権者は)共通しているが、それに向けて政治、経済をどう改革すべきかが争点になっている」と話す。

 住民投票後、アバディ首相率いる中央政府は、報復として自治区への国際航空便の乗り入れや米ドルの供給を停止。トルコやイランなど隣国も独立に反対した。自治政府が、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)との戦いの中で制圧した油田都市キルクークの支配権も、中央政府に奪還された。

 住民投票を主導した自治政府トップ、バルザニ議長は国家創設を断念し、「(住民投票は)無駄にはならない」と述べるのが精一杯だった。

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