1年余り後の消費税増税の結末は火を見るよりも明らかだ。デフレの継続、国民が消費を抑えてためたカネの多くが米英の金融市場を経由して、習近平中国国家主席の野望達成に貢献する。日本が成長を続けるための頼みは輸出であり、支えるのは異次元緩和に伴う円安と景気好調の米国市場だが、「米国第一主義」のトランプ政権が立ちはだかりかねない。トランプ氏はすでに安倍首相に対し、2国間交渉を通じて対米貿易黒字大幅削減を迫ると明言している。ホワイトハウスがその手段としてもくろむのは、為替条項付きの日米貿易協定締結だ。同条項は日銀の金融緩和政策を制約しかねない。
固より、米中貿易戦争は日本再生の絶好の好機になりうる。中国はトランプ政権の強硬策の直撃を受け、成長市場幻想がはげ落ちている。日本企業の多くは北京の反発を恐れてひそかに、対中投資の縮小、撤退を検討している。だが、国内市場はデフレ、需要減というなら、投資の転換先は米国、中国以外のアジアということになりかねない。企業の有り余る巨額資金は国内で行き場がないままになる恐れがある。
安倍首相がアベノミクスの総仕上げを目指すなら増税中止を宣言すべきなのだ。
(編集委員)