ふじのくに トップに聞く

県公立大学法人理事長・尾池和夫氏(78)

 ■「大学連携 20年先を見据えて」 

 文部科学省が入試改革を進め、静岡大浜松キャンパスと浜松医大が統合を目指すなど大学が激動の時代を迎える中、県立大学などを運営する県公立大学法人の理事長に、元京大総長で地震学者の尾池和夫氏(78)が就任した。尾池理事長に大学間連携や入試改革について聞いた。(聞き手・田中万紀)

                     ◇

 --地震学の研究者として、近年の災害多発をどう感じるか

 「災害ではそのたびに予想もしなかったことが起こるものだが、災害が繰り返すと対策も次第に改善される。大阪北部地震ではブロック塀の倒壊が問題になったが、防災先進県の静岡県では以前からブロック塀に代えて生け垣を推奨し、助成金を出している」

 --理事長としての大学経営方針は

 「公立大学は私学とも国立大学とも違う。大学の役目は教育、研究、社会貢献なのでその3つの柱をきちんと行う。そのためには人、場所、資材つまりお金が必要で、これらを確保できるようにするのが私の務め。静岡県立大学は安定した歴史を持っているので、それを崩さないようプラスするものがあればいい。ただ歴史があるということは、新しいものがないことにもつながる。3本柱を意識しながら、自らが視察した結果に基づく大学経営を行う」

 ◆大切なのは生涯学習

 --少子化時代の大学の役割とは

 「確かに子供は減っているが、大学教育で一番大切なのはむしろ生涯学習。一生学習しようとする人が世の中にたくさん生まれつつあるので、そういった人に社会人教育を実践できるような大学になっていけばいい。ニーズをつかみながら大学経営をしていけば、少子化はあまり影響しない」

 --他大学との連携や統合についてどう考えるか

 「規模が大きくなるメリットはある。県立大は静岡大との距離が近いので、研究や教育での連携は大いに行えばいい。ただ、今のところどこかの大学と一緒になろうということはない。10年20年先を見据えてどういう形がいいか見極める」

 --産業界との連携はどうあるべきか

 「企業との協力は社会貢献の最たるもの。そのためには企業が大学の研究に目を付けてくれるよう、広報したり大学側から売り込むことが大事。企業と大学が出合う場所が必要だ」

 --数年後に控える大学入試改革への対応は

 「入試とは大学の特徴を発揮できるものだが、改革の速度が遅い制度でもある。入試問題の作成は教員の負担が大きく、簡素化しなければならない。そこで私は過去問の活用を提案したい。過去問は非常に練られたいい問題なのに、同じ問題を出すことは許されていない。東大や京大、有名大学などの過去問の出題を認めれば、学生は良質な問題を一生懸命解くようになるし、大学側は出題ミスをなくすことができる。大学入試問題に正解はないので、新しい正解を発見するような学生を入れたい」

 ◆広報不足が課題

 --県に望む政策や支援は

 「県には新しい試みに予算を注ぎ込んでほしい。学者としては、富士山噴火や南海トラフ地震の予測を自治体が行えるようにしてほしい。国は地震計をたくさん設置しているが、平時はそのデータを利用していない。国の手が足りないのなら平時は自治体が活用すればいいのではないか。学者の知識をどのように一般市民に伝えるかは全ての分野が抱える問題だ」

 --県立大の課題とは

 「広報不足と外国人留学生の少なさ。外国への広報活動という点では公式ホームページの充実は重要だ。さらに『県立大といえばこの人』という出身者がいないので、これからそういう人材を育てていきたい」

 --受験生、在学生に望むことは

 「受験生にはミスマッチを自分で防いでほしい。自分の人生設計は自分で行い、大学に来て『こんなはずではなかった』はやめてほしい。今の世の中、必要な情報は開示されている。先輩の話を聞き、情報を取捨選択してほしい。在学生には、大学は自分で学習するところで正解はないと言いたい」

                   ◇

【プロフィル】尾池和夫

 おいけ・かずお 専攻は地震学。京都大理学部地球物理学科卒。京大防災研究所助教授、理学部教授、京大大学院理学研究科長(理学部長兼務)、副学長を歴任。平成15年から20年まで京大総長。現在は京都造形芸術大学長を兼務。30年4月から現職。78歳。東京都出身。

会員限定記事会員サービス詳細