国民の自衛官(6)

海自大湊警備隊大湊水中処分隊(青森県むつ市) 過酷な環境下、高い即応能力で燃料タンク処理

米軍三沢基地所属のF16戦闘機が投棄した燃料タンクの回収作業に当たる隊員=2月24日、青森県東北町(海自大湊水中処分隊提供)
米軍三沢基地所属のF16戦闘機が投棄した燃料タンクの回収作業に当たる隊員=2月24日、青森県東北町(海自大湊水中処分隊提供)

 「厳寒の中での作業となったが漁協、地域住民の温かいおもてなしに任務遂行の気概がわいた」。2月20日、米軍三沢基地(青森県三沢市)所属のF16戦闘機が全国有数のシジミの産地・小川原湖(同県東北町)に燃料タンクを投棄。漁への影響が危惧される中、知事からの災害派遣要請を受け、氷点下の過酷な環境の下、翌21日から潜水作業によるタンクの回収作業に当たった。

 隊の主な任務は海の爆弾機雷の除去、処分。日頃から機雷処理を想定した厳しい訓練を行っているが、今回は少し勝手が違った。氷結した湖面を割りながら落下地点の見極めと潜水した隊員の動きを注視しながらの慎重な作業を強いられたが、3月7日までの15日間で重量換算で94%の残骸を回収した。陣頭指揮を執った隊長の上田晃平3等海佐(38)=当時=は「日頃の訓練の成果のたまもの」と、部下10人の高い即応態勢と災害対処能力に目を細めた。

 活動期間中は住民からシジミ汁やカニ汁などが差し入れされ「心も体も温まり、住民のために何としてもやり遂げるという使命感がわいた」と上田隊長。

 ただ当初は、住民から米軍が起こした問題を自衛隊が肩代わりするような形で処理することへの批判があった。それでも「完遂できる能力があれば任務を行うのは当たり前。米軍も海自も関係ない」。完璧な仕事で周辺住民の不安を取り除き、対米軍感情の悪化を最小限に抑えたことに上田隊長は誇りを持っている。(福田徳行)

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