野口健の直球&曲球

「生き延びる力」を養うために

 度重なる豪雨災害に対し「異常気象」という言葉をよく耳にするが、僕の記憶を遡(さかのぼ)っていくと、ヒマラヤでも同じような事が言われ続けてきた。あれは確か1990年代中頃だったか、エベレスト遠征中にベースキャンプで雨が降り、驚かされ、またハエが飛んできた時には「エベレストにハエ!」と世界的ニュースとして大々的に報じられた。当時、異常現象として話題を集めた、これらの出来事は今では普通になっている。

 素人的な発想だが、繰り返されるということは、もはや「異常事態」ではなく、「気候が変動」してきているのだろう。つまり、「変わってきたのだ」と。人は経験則で物事を判断したくなる。今夏の豪雨災害の際も被災された高齢の方々から「こんな雨は生まれて初めて」と。「避難勧告が出されたのになぜ、避難しなかったのですか」とマイクを向けられ、「今までこんな被害は起きなかったから大丈夫だと思った」。

 今夏の度重なる自然災害は「たまたま集中した」だけのことなのか、それとも「毎年のように繰り返していく」ことになるのか分からないが「災害はやってくるものだ」と心し、備えていた方がいいだろう。災害に強い街づくりも待ったなしだろうし、同時に災害に強い人づくりも必要だろう。まず必要なことは自分の命を守ること。自分の命を守れてこそ人の命を救えるのだ。そして、この国ならば災害規模にもよるが、3日ないし5日を自力で生き延びれば国がなんとかしてくれる。