JR脱線事故

困難、2人で向き合い続け 奇跡の生還遂げた小椋さん、夫妻の事故後の歩み綴った本出版

JR福知山線脱線事故で負傷した小椋聡さん(左)。妻の朋子さんとともに歩んだ事故後の軌跡をつづった「ふたつの鼓動」を出版した=13日、兵庫県多可町(原川真太郎撮影)
JR福知山線脱線事故で負傷した小椋聡さん(左)。妻の朋子さんとともに歩んだ事故後の軌跡をつづった「ふたつの鼓動」を出版した=13日、兵庫県多可町(原川真太郎撮影)

 乗客106人が死亡、562人が負傷した平成17年4月のJR福知山線脱線事故で負傷した兵庫県多可町のイラストレーター兼デザイナー、小椋聡さん(49)と、妻の朋子さん(50)が20日、事故後の心の変遷を記した「ふたつの鼓動」を出版する。遺族と連携し、さまざまな活動に取り組んだ夫、ともに事故に関わり、重い精神疾患をわずらった妻。未曾有の大事故に翻弄されながらも、13年半にわたり手を携えて歩んできた夫婦の「絆」がつづられている。(原川真太郎)

 同県西宮市に住んでいた小椋さんは、当時勤めていた大阪の出版社に向かう途中で事故に遭った。乗っていたのは、マンションに激突して車体が大きくひしゃげ、最も多くの犠牲者が出た2両目。足首を骨折するなど重傷を負ったが、奇跡的に一命を取り留めた。

 「生き残った者だけが事故を伝えられる」。小椋さんは事故の後遺症に苦しみながらも、何度も報道機関の取材に応じた。犠牲者の家族からの訴えに応えて犠牲者の「最期の乗車位置」を探す取り組みを続け、JR西日本には、事故の組織的な背景や企業体質を自ら検証するよう、遺族らとともに繰り返し求めた。

 朋子さんは、憑(つ)かれたように活動を続ける小椋さんと常に行動をともにしていたが、事故から2年半以上が過ぎたころ、食欲がなくなり体重が激減した。症状は徐々に悪化し、病院で受けた診断は「双極性障害」。事故とかかわり続けたことによるストレスが原因だった。

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