新温泉町の前町長、岡本英樹さん(67)が18日、但馬杜氏(たじまとうじ)の匠の技を生かした同町産の日本酒醸造に取り組む計画を明らかにした。京都府内の酒造会社の社長を引き継ぎ、町内で酒蔵場所を確保。年明けに酒を仕込み、来年3月頃には新酒を販売する見込みだ。
全国には日本酒をつくる杜氏集団があり、美方郡(新温泉、香美両町)の但馬杜氏は全国的にも有名。しかし、昭和40年代の約3千人をピークに減少。平成29年度は88人となり、高齢化している。
「このままでは、新温泉町の杜氏技術や酒造り文化が廃れてしまう」。岡本さんは町長選に初当選(平成21年)したときから、「新温泉町で、但馬杜氏の手による日本酒を醸造したい」と思っていた。
昨年10月の町長選で3選は果たせなかったが、選挙後、日本酒醸造に自ら取り組むことを決意。今年初め、醸造を休止していた京都府京丹後市内の酒造会社の社長を引き継ぎ、新温泉町用土にあった元牛乳加工場を醸造場所(約300平方メートル)として確保し、会社も移転した。
今後、施設の改修と醸造タンクなどを設置。旧酒造会社から使用できる資材を運び、年明けには地元産の酒米を使って但馬杜氏2人が匠の技で仕込みを行う。来年3月には待望の新酒が出来上がるという。
岡本さんは「新酒の販売までには、新温泉町にふさわしい新たな社名と銘柄も決めたい。但馬杜氏の人材育成にも取り組みたい」と期待を膨らませている。