佐藤優の世界裏舞台

文理融合 同志社大の挑戦

日本の大学教育を抜本的に変革しないと、21世紀に日本が国際社会で主導的役割を果たせなくなるという危機意識を抱いている大学人は多いと思う。しかし、変革に向けた第一歩を踏み出すことが難しい。

この点で、同志社大学が興味深い試みをした。琵琶湖畔の北小松にある同志社びわこリトリートセンターに文科系、理科系の両学部から選んだ24人の学生と8日から3泊4日の合宿をし、日露外交、ゲノム編集、AI(人工知能)について教授が講義を行い、学生との質疑応答やディベート、レポート作成を行うかなり密度の濃いセミナーを行った。セミナーの仮称は「新島塾」(第0期)。新島塾という名称は同志社の創立者である新島襄から取り、第0期としたのは、今後もこのような行事を行うかどうか、継続する場合、名称をどうするかについても、学生と教師がよく話し合った上で決めたいと考えたからだ。

1日目は、同志社大学の松岡敬学長(理工学部教授)と筆者(神学部客員教授)が、文理融合した新時代のリーダーを作っていきたいという話をした。松岡氏の専門は機械工学だ。第4次産業革命、ソサエティー5・0への移行にあたって、狭い専門分野の知識や技術だけではやっていけないので、文理融合した学知を身につけ、複雑な社会情勢を読み解く力を身につけなくてはならないと強調した。

その上で、世界でリーダーシップを発揮するような人材を育成するだけでなく、一人一人の学生を大切にする教育をしたいのだが、教える側には見えていないことがあると思うので、率直な意見を伝えてほしいと言った。夜遅くまで松岡氏は学生たちと膝を突き合わせて議論していた。その姿を見て、この人はほんとうに教えることが好きなのだと思った。教育とは情報や技法の伝達だけでなく、人間的信頼関係を構築することだという同志社の伝統を再認識した。

2、3日目は、外務省ソ連課長、欧亜局長を歴任し、北方領土交渉について熟知する東郷和彦氏(京都産業大学教授)と筆者で過去の交渉経緯、国際法的観点からの情報を提供し、学生にレポートを作成させた。

ある学生が「1956年の日ソ共同宣言に基づいて歯舞群島と色丹島の日本返還を実現し、平和条約を締結する。国後島と択捉島では一部の土地を賃借して、日本の規則に基づいて経済活動を行う。そうやって多少時間がかかっても国後島と択捉島の日本化を進め、日本への帰属替えを目指す。あの戦争はソ連(ロシア)との関係では、日本が侵略された側だ。歴史的観点から北方四島の返還を諦めてはならない」という趣旨のレポートを作成したので、それに基づいて議論した。