人工呼吸器やたんの吸引など日常的に医療が必要な子供たちについて知ってもらおうと、元NHKアナウンサーの内多勝康さん(55)が、「『医療的ケア』の必要な子どもたち」(ミネルヴァ書房)を出版した。内多さんは「家族だけでなく、社会で支えていく問題と知ってもらえたら」と話している。(油原聡子)
◆新刊で実情つづる
内多さんは現在、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)内にある短期入所施設「もみじの家」のハウスマネージャーを務めている。
もみじの家は、医療的ケアが必要な子供やその家族のための施設だ。看護師らが、日頃家庭で行われているケアを子供たちに提供。子供がそこで過ごす間、家族は安心して休息できる時間がもてる。
医療的ケア児を取り巻く環境は厳しい。「多くの家族が保育園入園を断られ、母親は働きに出ることも難しい状況」だという。
本書では、医療的ケア児や家族が抱える問題のほか、制度や法律についても記されている。人工呼吸器を付けているために学校に行けない女の子の手記など、当事者や家族の声も紹介。その一方、52歳でNHKを辞め第二の人生を歩み始めた内多さんが、新しい職場で奮闘する様子もつづられている。
◆ディレクター希望
内多さんが、福祉分野に関心を持つようになったのは、NHK時代だ。
初任地の高松放送局で、地元のボランティア協会の祭りで司会をしたのを機に、福祉分野に人脈ができた。もともとディレクター希望だっただけに、「目の前の仕事を一生懸命こなしていくうちに福祉がフィールドになっていったんです」と振り返る。転勤後も取材は続け、自閉症の男性が個性を生かして川崎市の公務員として働く様子を番組にして大きな反響を得た。