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昨年7月の九州北部豪雨で、ヘリコプター「UH-1」の機長として被災地に飛んだ。孤立地域での人命救助が任務だった。
雲が垂れ込め、激しい雨が降る。視界は悪かった。樹木や送電線を避けて降下すると、福岡県朝倉市松末地区上空で、住民が手を振っているのが見えた。
地上30メートルまで機体を下げ、ホイストと呼ばれる救助用ウインチで、住民をヘリにつり上げる。朝倉市と大分県日田市を含め、約20人を救助した。
「大きな災害では、自分がヘリを飛ばすことで救える人がいる。そう思うと、一刻も早く現場に向かいたい」。そう語る。
30年間で28件の災害派遣に従事した。山林火災での上空からの消火活動や、住民救助で、狭いあぜ道にヘリを降ろしたこともある。過酷な現場ばかりだが、計6100時間に上る飛行で一度も事故はない。
そこには高い操縦技術に加え、日々の努力がある。
「尾根や谷など、普段から山のシワを一つ一つ頭に入れるよう心がけている」。行方不明者の情報がありながら助けられなかったときは悔やみ続け、その思いを胸に刻んできた。