話の肖像画

ゲームクリエーター・田尻智(2) 昆虫採集とインベーダーゲーム

〈ところが中学生になる頃から、周囲の環境が一変する。急速な都市開発で、自然がなくなってしまったのだ〉

僕らの世代は、誰でも似たような経験があるんじゃないかな。ザリガニが手づかみでとれた沼地は埋め立てられ、クワガタのいる雑木林が住宅地になり、いつもの遊び場が半年か1年でがらりと変わってしまう。山を切り崩したところに貝殻の化石みたいなのがたくさん出てきて、喜んで採りに行っていたら、すぐに造成されてなくなってしまうとかね。代わりにできたのがゲームセンター(笑)。すぐにのめり込みましたよ。

〈以降、中学時代はゲームセンターに通い、インベーダーゲームに熱中した〉

釣り堀だったところがゲームセンターになって、そこは製氷所も兼ねていたから、無料で飲み物を出してくれたんですね。それが飲みたくて通っていたら、いつの間にか…(笑)。そんなに小遣いがあるわけじゃないので、上手な人の後ろで見ているだけの日もあったけれど、コツとか裏技とかも分かってきて、中学生時代はもう、ゲームのことばかり考えていました。

〈中学卒業後は普通科高校ではなく、東京都八王子市にある国立の東京工業高等専門学校(東京高専)に進学する〉

高専を選んだのは、普通の高校よりもコンピューターが学べると思ったから。少しでもゲームと関連しているところにいたかったのです。高専は自由な校風で、単位さえとっておけば好きなことができたので、結果的に大正解でした。在学中に自作したゲーム専門のミニコミ誌が、自分の将来を変えることになるのですから…。(聞き手 川瀬弘至)

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