話の肖像画

ゲームクリエーター・田尻智(2) 昆虫採集とインベーダーゲーム

田尻智さん(松本健吾撮影)
田尻智さん(松本健吾撮影)

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〈新製品が次々に登場し、入れ替わりの激しいゲームソフトの中で、異例のロングヒットを続ける「ポケットモンスター(ポケモン)」シリーズを生み出した。その原点は、昆虫採集などに夢中だった小学生時代の体験にあった〉

育ったのは東京都町田市です。小学生の頃は周囲にたくさん自然が残っていて、友達と競ってザリガニを捕まえたり、クワガタをとったりする毎日でした。クワガタは夜行性だけれど、クヌギの木の下に石を置いて、翌日に石をどけてみると、その下にいるんです。どうしたらとれるか自分で調べたり工夫したりして、とにかく夢中でしたね。

〈好きなことにのめり込み、とことん突きつめないと気が済まないタイプ。昆虫採集だけに飽き足らず、飼育方法にも工夫するようになる〉

せっかく珍しい生き物を捕まえても、すぐに死んでしまうと悲しいですよね。だったら自分で調べてみる。小食のほうが長生きしやすいとか、一日の気温差が少ない方がいいとか、エサもいろいろ試してみました。クワガタの越冬に成功したり、オタマジャクシをカエルにしたり、小学生の頃は本当にたくさんの生き物を育てました。

自分で調べて、実際に試してみて、分かったことが自分の知識になるというのが、昔から僕の信条なんです。カイコも飼育しましたよ。マユになった後も飼い続けたから、羽化したガが部屋中を飛び交ったりして大変でしたが…(笑)。そして、こうした体験の一つ一つが、不思議な生物であるポケモンを考案する際の素地になったのです。

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