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駆け出し記者の頃、大阪管区気象台を担当していて、予報官が「最も警戒すべき台風は室戸のコースだ」と教えてくれたのを思い出す。昭和9(1934)年9月21日、高知県室戸岬付近に上陸した室戸台風は、淡路島を通過して阪神間に再上陸した。最大瞬間風速60メートルという猛烈な風が吹いた。
▶大阪では木造校舎の大半が倒壊し、ちょうど登校時刻だったため、多くの児童や教職員が犠牲になった。大阪城公園内に慰霊の教育塔が建つ。西宮市に住んでいた湯川秀樹博士は、嵐の音を聞きながら、ぼんやり浮かんでいた考えが急にまとまるのを感じたという。それがノーベル物理学賞を受賞した中間子理論だった。
▶36(1961)年の第2室戸台風もほぼ同じ場所に9月16日に上陸し、暴風雨に加えて高潮で京阪神に甚大な被害をもたらした。室戸、第2室戸とよく似たコースをたどって台風21号がやって来た。先の予報官は「必ず第3室戸が来る」と言っていた。