虎番疾風録

どうなる阪神の監督人事 雲行き怪し?「継続審議」 其の一14

【虎番疾風録(14)】どうなる阪神の監督人事 雲行き怪し?「継続審議」
【虎番疾風録(14)】どうなる阪神の監督人事 雲行き怪し?「継続審議」
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虎番疾風録 其の一13

台風の中、久しぶりに編集局へ上がった。

「殿、中西監督の辞意は固いです。『ワシが身を引くことで阪神が強うなるんやったら悔いはない』と言ったときは、こっちまでホロリときました」

「龍は感動しいやのう」と平本先輩は笑った。

昭和56年10月14日午後4時過ぎ、甲子園球場で小津-中西会談は始まった。球場内のプレスルームは100人近い報道陣でごったがえしていた。中西監督の退団が決定。そして新監督誕生へ。「タイガース再建」へのスタートを切る。そんな興奮と熱気で包まれていた。

約1時間半後、小津社長がプレスルームに姿を見せた。

「今、終わりました。きょうのところは…」

〈きょうのところは?〉体がつんのめった。

「16日に改めて話し合うことになりました」。なんと、結論持ち越しの「継続審議」となったのである。

話し合いの中で中西監督は(1)健康に自信をなくした(2)チーム不振の責任をとりたい(3)東京-大阪の二重生活の負担が大きい―を理由に退団を申し出た。これに対し小津社長は「オーナーも留任を望んでおり、辞める理由がない」と慰留に努めた。

予想された動きである。本来なら、それでも中西監督の辞意が固いため、球団はやむなく了承―となるはずだった。それがならなかったということは―。

また追いかけっこだ。口を真一文字に結び、厳しい表情の中西監督は一言も発せず球場を出た。遠征(中日戦)準備のために一旦、自宅マンションに戻り、そして新大阪駅へ。プラットホームに立ち、ようやく少し落ち着いたのか、ポツリ、ポツリと話し始めた。

「ボクの真意を述べ、いろんなことをお願いした。自分の能力は知ってるし、甘えているかもしれないが、辞めさせてほしいと伝えたよ」

「オーナーが残留を希望しているといわれたので、即答は避けたが…」

「16日はどちらかが折れることになるやろな。ボクの場合は一旦、口に出した以上は…」。最後は尻すぼみで、はっきりと聞き取れないまま、午後7時46分、新大阪発の新幹線で名古屋に向かった。

名古屋から会社へ連絡を入れると、平本先輩が『どちらかが折れる』という中西発言に微妙なニュアンスの変化を嗅ぎ取っていた。

「なんかおかしいな。何が何でも身を引くという断固としたものが感じられん。慰留されたから、考え直してもう一度―はないよ。そんな優柔不断なことじゃ、監督は務まらん。それに、もし球団に進退を一任する気だったら、最終戦まで黙っていて、軽率な辞意など口にすべきじゃない」

〈殿の言う通り!〉だった。(敬称略)

虎番疾風録 其の一15

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