「口内の健康」大切さ知って 神奈川県歯科医師会、オーラルフレイル対策に重点

 オーラルフレイル=口腔(こうくう)内の虚弱化=の放置は危険-。県歯科医師会(横浜市)は平成30年度の事業計画と進捗(しんちょく)状況を市内で発表。会員の歯科医師らがオーラルフレイル対策の重要性を訴えている。鈴木駿介会長は「放置すれば介護が必要になりうる」と警鐘を鳴らし、同会などが開発を進めている改善プログラムの実施を推奨している。(外崎晃彦)

 「口の中の機能が衰え、歯を失うと、炭水化物などやわらかな食物ばかりとるようになり、タンパク質不足に陥る。筋肉量が低下し、足腰が弱くなり、要介護に至る」。事業発表では、海老名市歯科医師会の鈴木仙一会長が、なぜオーラルフレイルが全身の健康に直結するかを解説。その上で、自覚や改善意欲、予防の重要性を呼びかけた。

 ◆改善望める症状

 オーラルフレイルは、対策次第で死亡リスクが軽減し、健康寿命が延びることなどが、県歯科医師会などの検証によって明らかになっている。そのため同会は「未病」を提唱し、健康寿命の延伸を図る県と協力し、オーラルフレイル対策の周知を進めている。

 オーラルフレイルが原因と考えられる症状は「かたいものが食べにくい」「お茶や汁物でむせる」「口の乾きが気になる」-などだという。チェックリストにより自己診断もできるようにしている。

 改善プログラムは、早口言葉などによる発音訓練▽舌トレーニング用具による舌圧改善▽ガムによる咀嚼(そしゃく)訓練-などを行う。開口訓練や「かながわ・お口の健康体操」による顔面の体操などによっても改善が望めるという。

 同会の佐藤哲郎理事は「オーラルフレイルは可逆的(元に戻せる)。加齢を理由に諦めず、口の健康に前向きに取り組んでほしい」と呼びかけている。

 改善プログラムの普及を図る同会は今年度、海老名市歯科医師会が中心となり、同市内の65歳以上の約750人を対象に大規模な検証を実施している。

 ◆県民向けサイトも

 県歯科医師会はインターネットによる情報発信も強化している。ホームページを大幅にリニューアルし、歯や口腔内の健康に関する情報を掲載するウェブサイト「Oral Health Online(オーラルヘルスオンライン)」として新たに公開を始めた(アドレスはhttps://www.dent-kng.or.jp/)。専門用語を極力使わず、県民が役立てやすい歯科医療情報の提供を目指しているという。

 サイトは、同会所属の歯科医師らが持ち回りで記事を執筆。「歯とお口の基礎知識」や「歯科に関する活動」などのカテゴリーに分けて掲載している。オーラルフレイルの周知や啓発を目的とした動画も掲載。サイトは月4回以上の更新を目標としている。

 同会の高柴重幸理事は「専門的な内容を改め、県民目線で、口の健康不安を取り除けるような有益な情報を提供していきたい」と話し、サイトの利用を呼びかけている。

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 ■県歯科医師会 県内の歯科医師ら約4000人が所属する組織。「我国西洋歯科医学発祥の地」の碑が立つ横浜市中区の「県歯科保健総合センター」に事務局を置き、明治40年の発足から110年以上にわたり、県民の歯の健康維持に取り組んでいる。平成30年度の事業計画では、オーラルフレイル対策のほか、歯科医師の地位向上▽会員の経営の安定化▽組織力強化-を重点課題としている。

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