駅や空港が、増加する訪日外国人旅行者らでにぎわう中、交通各社によるスマートフォンを活用した案内システムの実証実験が相次いでいる。ターゲットは日本語の分からない訪日客や障害のある人などの交通弱者で、困りごとを新技術でカバーするのが狙いだ。(日野稚子)
白杖(はくじょう)とスマホを手にした視覚障害者の被験者が点字ブロックを頼りに歩いている。QRコードが張られたブロックに来ると「右折、4メートル前進」と音声案内がスマホから流れ、被験者は指示通りに歩みを進めた。東京メトロが今月、辰巳駅(東京都江東区)で公開した視覚障害者向けの駅構内ナビゲーションシステム「shikAI(シカイ)」実証実験の一コマだ。
シカイは点字ブロックに張ったQRコードをスマホで読み取ると、現在地から利用者が入力した目的地までを音声案内してくれる仕組みだ。初めてシカイを体験した被験者は「どこまで進めばよいかが音声案内で分かるので安心できた」と話す。
技術開発を手がけた技術者人材派遣会社プログレス・テクノロジーズ(同)の小西祐一会長は「GPS(衛星利用測位システム)の届かない地下鉄駅構内で、初めての場所でも1人で安全に歩くことができる」と強調。同社と東京メトロは今年度中に100人程度の被験者で実証を進める方針だ。